秒速5センチメートル 第1話 全セリフ

  1. 2008/09/05(金) 10:41:20|
  2. 新海誠|
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秒速5センチメートル 第1話 「桜花抄」

桜の落ちるスピード…。いつか地上に舞い落ちる花びらのように、僕たちも、いつかはどこかに辿り着けるのだろうか。
彼の望む場所は彼女のいる場所。でも、それは大人になるにつれて忘れていく感覚だった。
幼い頃の魂の叫びに似た衝動は、いつしか消え、大人は大人として生きる。
これはその前段階のお話。切ない別れの先に見える、巨大な人生という闇が、二人の前に立ちはだかっていた。
その闇に抗う術は、今の彼らにはない…。



明里「ねぇ、秒速5センチなんだって」
貴樹「えっ、なに?」
明里「桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル」
貴樹「ん〜。明里、そういうことよく知ってるよね」
明里「ねぇ、なんだか、まるで雪みたいじゃない?」
貴樹「そうかなぁ? ね〜、待ってよ! 明里!」
明里「貴樹くん、来年も一緒に桜、見れるといいね」


明里「遠野貴樹様へ。大変ご無沙汰しております。こちらの夏も暑いけれど、東京に比べればずっと過ごしやすいです。でも今にして思えば、私は東京のあの蒸し暑い夏も好きでした。溶けてしまいそうに熱いアスファルトも、陽炎のむこうの高層ビルも、デパートや地下鉄の寒いくらいの冷房も。私たちが最後に会ったのは、小学校の卒業式でしたから、あれからもう半年です。ねぇ、貴樹くん、あたしのこと、覚えていますか?」

明里「前略貴樹くんへ。お返事ありがとう。うれしかったです。もうすっかり秋ですね。こちらは紅葉がきれいです。今年最初のセーターをおととい私は出しました」

先輩「遠野くん」
貴樹「先輩」
先輩「なに?ラブレター?」
貴樹「違いますよ」
先輩「ごめんね、全部お願いしちゃって」
貴樹「いえ、すぐ終わりましたから」
先輩「ありがとう。ねぇ、転校しちゃうって本当?」
貴樹「はい、三学期一杯です」
先輩「どこ?」
貴樹「鹿児島です。親の都合で」
先輩「そうか。寂しくなるなぁ」

明里「最近は部活で朝が早いので、今この手紙は電車で書いています。この前、髪を切りました。耳が出るくらい短くしちゃったから、もし会っても私って分からないかも知れませんね」

貴樹の母「ただいま」
貴樹「おかえり」


明里「貴樹くんも、少しずつ変わっていくのでしょうね」

明里「拝啓。寒い日が続きますが、お元気ですか。こちらはもう何度か雪が降りました。私はその度にものすごい重装備で学校に通っています。東京は雪はまだだよね。引っ越してきてからもつい癖で、東京の分の天気予報まで見てしまいます」

チームメート「雨でも降らねえかなぁ」
チームメート「でも屋内でもきついぜ」
貴樹「なぁ、栃木って、行ったことあるか?」
チームメート「はっ? どこ?」
貴樹「栃木」
チームメート2人「ない」
貴樹「どうやって行くのかな」
チームメート「さぁ。新幹線とか?」
貴樹「遠いよな」
部長「一年」
みんな「はい!」
部長「ラスト半周!」

明里「今度は貴樹くんの転校が決まったということ、驚きました。お互いに昔から転校には慣れているわけですが、それにしても鹿児島だなんて…。 今度はちょっと遠いよね。いざという時に、電車に乗って会いに行けるような距離がなくなってしまうのは、やっぱり少し…ちょっと寂しいです。どうかどうか、貴樹くんが元気でいますように」

明里「前略。貴樹くんへ。3月4日の約束、とてもうれしいです。会うのはもう一年ぶりですね。なんだか緊張してしまいます。うちの近くに大きな桜の木があって、春にはそこでも多分、花びらが秒速5センチで地上に降っています。貴樹くんと一緒に春もやって来てくれればいいのに、って思います」

チームメート「遠野、部活行こうぜ」
貴樹「ああ。あのさ、俺今日ちょっと、部活だめなんだ」
チームメート「引っ越しの準備か?」
貴樹「そんなとこ。悪いな」

明里「私の駅まで来てくれるのはとても助かるのですけれど、遠いのでどうか気をつけて来て下さい。約束の夜7時に、駅の待合室で待っています」


貴樹「明里との約束の当日は、昼過ぎから雪になった」

明里「ね、貴樹くん。ネコ、チョビだ」
貴樹「こいつ、いつもここにいるね」
明里「でも今日は独りみたい。ミミはどうしたの?独りじゃ寂しいよね」


貴樹「あの本、どう?」
明里「なかなか。昨日一晩で40億年分読んじゃった」
貴樹「どの辺り?」
明里「アノマロカリスが出てくる辺り」
二人「カンブリア紀!」
明里「あたしハルキゲニアが好きだな。こんなの」
貴樹「まぁ、似てるかも」
明里「貴樹くんは何が?」
貴樹「オパビニアかな」
明里「あぁ、目が5つある人だよね」

貴樹「僕と明里は精神的にどこかよく似ていたと思う。僕が東京に転校してきた一年後に明里が同じクラスに転校してきた。まだ体が小さく病気がちだった僕らは、グラウンドよりは図書館が好きで、だから僕たちはごく自然に仲良くなり、そのせいでクラスメイトから、からかわれることもあったけれど、でもお互いがいれば不思議にそういうことはあまり怖くはなかった。僕たちはいずれ同じ中学校に通い、この先もずっと一緒だと、どうしてだろう、そう思っていた」

放送「新宿、新宿、終点です。お降りのお客様は…」

貴樹「新宿駅に独りで来たのは初めてで、これから乗る路線も、僕には全て初めてだった。ドキドキしていた。これから僕は、明里に会うんだ」

放送「まもなく、武蔵浦和、武蔵浦和に到着いたします。次の武蔵浦和では、快速列車の待ち合わせのため、この列車は4分ほど停車します。与野本町、大宮までお急ぎの方は…」

明里「あの、篠原と申しますけど、あの、貴樹くんいらっしゃいますか」
貴樹の母「明里ちゃんよ」
貴樹「えっ、転校? 西中はどうすんだ?せっかく受かったのに…」
明里「栃木の公立に手続きするって。ごめんね…」
貴樹「いや、明里が謝ることないけど…」
明里「葛飾のおばさんちから通いたいって言ったんだけど、もっと大きくなってからじゃないと、ダメだって…」
貴樹「分かった。もういいよ。もういい…」
明里「ごめん…」

貴樹「耳が痛くなるくらい押し当てた受話器越しに、明里が傷つくのが手に取るように分かった。でも、どうしようもなかった」


貴樹「乗り換えのターミナル駅は帰宅を始めた人々で込み合っていて、誰の靴も雪の水を吸ってぐっしょりと濡れていて、空気は雪の日の都市独特の匂いに満ちて、冷たかった」

放送「お客様にお知らせいたします。宇都宮線、小山、宇都宮方面行き列車は、ただいま雪のため、到着が10分ほど遅れております。お急ぎのところ、お客様に大変ご迷惑をおかけいたします…」

貴樹「その瞬間まで、僕は電車が遅れるなんていう可能性を、考えもしなかった。不安が急に大きくなった」

放送「ただいまこの電車は雪のため10分ほど遅れて運行しております。お急ぎのところ、列車遅れておりますこと、お詫びいたします」

貴樹「大宮駅を過ぎてしばらくすると、風景からはあっという間に建物が少なくなった」

放送「次は、久喜、久喜。到着が大変遅れましたこと、お詫び申し上げます。東武伊勢崎線にお乗り換えの方は、5番出口にお回り下さい。後続列車が遅れているため、この列車は当駅にて10分ほど停車します。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけいたしますが、今しばらくお待ち下さいますよう、お願いいたします」

男性「(寒さで列車のドアを閉める)」
貴樹「すみません」

放送「後続列車が遅れているため、この列車は当駅で10分ほど停車します。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけいたしますが、今しばらく…」

放送「野木、野木。お客様にお断りとお詫びを申し上げます。後続列車遅延のため、この列車は当駅でしばらくの間停車します。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけいたしますが、今しばらくお待ち下さいますよう、お願いいたします」

貴樹「駅と駅との間は、信じられないくらい離れていて、電車が一駅ごとに信じられないくらい長い間停車した。窓の外の見たこともないような雪の荒野も、ジワジワと流れていく時間も、痛いような空腹も、僕をますます心細くさせていった。約束の時間を過ぎて、今頃明里はきっと不安になり始めていると思う。あの日、あの電話の日、僕よりもずっと大きな不安を抱えているはずの明里に対して、優しい言葉をかけることができなかった自分が、ひどく恥ずかしかった」

明里「じゃあ、今日で、さよならだね」

貴樹「明里からの最初の手紙が届いたのは、それから半年後。中一の夏だった。彼女からの文面は全て覚えた。約束の今日まで二週間かけて、僕は明里に渡すための手紙を書いた。明里に伝えなければいけないこと、聞いて欲しいことが、本当に僕にはたくさんあった」

放送「大変お待たせいたしました。まもなく宇都宮行き、発車いたします。小山、小山。東北新幹線を乗り換えの方は… 東北新幹線下り盛岡方面を乗り換えの方は1番線、上り東京方面を乗り換えの方は5番線へお回り下さい…」

放送2「お客様にお知らせいたします。ただいま両毛線は、雪のため、大幅な遅れをもって運転しております。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしております。列車到着まで今しばらくお待ち下さい。次の上り…」

貴樹「とにかく、明里の待つ駅に向かうしかなかった」

放送「8番線、足利前橋方面、高崎行き上り電車が参ります。危ないので… 」

放送「お客様にご案内いたします。ただいま、降雪によるダイヤの乱れのため、少々停車いたします。お急ぎのところ大変恐縮ですが、現在のところ、復旧のめどは立っておりません。繰り返します。ただいま、降雪によるダイヤの乱れのため、少々停車いたします。お急ぎのところ大変恐縮ですが、現在のところ、復旧のめどは立っておりません」

明里「貴樹くん、お元気ですか? 部活で朝が早いので、この手紙は電車で書いています」

貴樹「手紙から想像する明里はなぜか、いつも独りだった。電車はそれから結局、2時間も何も無い荒野で停まり続けた。たった1分がものすごく長く感じられ、時間ははっきりとした悪意を持って、僕の上をゆっくりと流れていった。僕はきつく歯を食いしばり、ただとにかく泣かないように耐えているしかなかった。明里…どうか…もう…家に…帰っていてくれればいいのに」


放送「3番線、足利前橋方面、高崎行き電車が到着いたします。この電車は雪のため、しばらく停車します」

貴樹「明里…」

貴樹「おいしい」
明里「そう? 普通の焙じ茶だよ」
貴樹「焙じ茶? 初めて飲んだ」
明里「うそ。絶対飲んだことあるよ」
貴樹「そうかな」
明里「そうだよ。それからこれ、私が作ったから味の保障はないんだけど、よかったら食べて」

貴樹「ありがとう。お腹すいてたんだ、すごく」
明里「どうかな?」
貴樹「今まで食べた物の中で、一番おいしい」
明里「大げさだなぁ」
貴樹「本当だよ」
明里「きっとお腹すいてたからよ」
貴樹「そうかな」
明里「そうよ。あたしも食べようと。うふ」
明里「引っ越し、もうすぐだよね」
貴樹「ん、来週」
明里「鹿児島かぁ」
貴樹「遠いんだ。栃木も遠かったけどね」
明里「帰れなくなっちゃったもんね」
駅員「そろそろ閉めますよ。もう電車もないですし」

貴樹「はい」
駅員「こんな雪ですから、お気をつけて」
二人「はい」


明里「見える、あの木?」
貴樹「手紙の木?」
明里「ん、桜の木。ねぇ、まるで雪みたいじゃない?」
貴樹「そうだね」

貴樹「その瞬間、永遠とか、心とか、魂とかいうものがどこにあるのか分かった気がした。13年間生きてきたことすべてを分かち合えたように僕は思い、それから次の瞬間、たまらなく悲しくなった。明里のそのぬくもりを、その魂を、どのように扱えばいいのか、どこに持っていけばいいのか。それが僕には分からなかったからだ。僕たちはこの先もずっと一緒にいることはできないと、はっきりと分かった。僕たちの前には未だ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく横たわっていた。でも、僕をとらえたその不安は、やがて緩やかに溶けていき、あとには、明里の柔らかな唇だけが残っていた。その夜、僕たちは畑の脇にあった小さな納屋で過ごした。古い毛布に包まり、長い時間話し続けて、いつの間にか眠っていた。朝、動き始めた電車に乗って僕は明里と別れた」

明里「あの…貴樹くん。貴樹くんは、きっとこの先は大丈夫だと思う!絶対!」
貴樹「ありがとう。明里も元気で!手紙書くよ!電話も!」

貴樹「明里への手紙をなくしてしまったことを、僕は明里に言わなかった。あのキスの前と後とでは、世界のなにもかもが変わってしまったような気がしたからだ。彼女を守れるだけ力が欲しいと、強く思った。それだけを考えながら、僕はいつまでも、窓の外の景色を見続けていた」


ついでの動画はこちら
秒速5センチメートル 第1話 「桜花抄」


新海誠



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